当院では、めまい患者さんには原則的に全ての方に原因を特定するための眼振検査を行っています。耳からのめまいは眼振以外に客観的な所見はありませんし、脳からのめまいであっても、そのめまいは耳のセンサーから眼球を動かす信号を伝える脳の回路の異常で起こるものですから、眼振検査を省略できません。「とりあえずMRI」は、「鼻の診察を省いた血液検査だけでのアレルギー性鼻炎の診断」と同類の、大変レベルの低い医療です。
ゴーグルを着けての眼振検査ですが、反復性めまいや慢性めまいの患者さんはすでに自然に(静的)前庭代償を得ていて、検査開始直後には自発眼振が観察されないことも多くあります。そのため、暗算負荷や頭振りやバイブレーター刺激等で自発眼振を有視化する工夫がなされています。ベッドで仰臥位になっていただいて30秒以上経過しないと確認できないこともあります。
他院でゴーグルを着けての検査は受けたが異常なかったとおっしゃる方が大勢いらっしゃいますが、殆どの方が診察椅子に座った状態だけで5秒ほどの検査であったようです。5秒でも50秒でも検査費用は同額です。めまいの一番頻度が高いとされる後半規管に耳石が入って起きる良性発作性頭位めまいは、ベッドで寝起きをした時に観察される眼振以外には診断手段がないにもかかわらず、ベッドでの寝起きの検査なしにそう診断されたとおっしゃる方が多数来られます。それは、すべて場当たり的な当てずっぽうの診療です。
検査で得られた客観的な記録をもとに原因疾患を特定するのですが、めまい患者さんの中には前庭眼反射の経路の異常に起因しない状態が少数ながら存在します。PPPDや心因性めまいや自律神経の機能異常等によるめまいがこれに相当しますが、これらの病気の診断には、少なくとも当院で行っている眼振検査で異常がないことが必須の条件になります。したがって、この検査なしにそう診断されたら当てずっぽうの診断で、別の病気が存在する可能性があります。異常が見出せなくても得られる収穫はとても多いのに、異常が見出せなかったから無駄な検査でしたというのは大きな間違いです。
