目次
文責 垂井 康之
(日本めまい平衡医学会認定 めまい相談医)
●「めまいの状況(種類)」と
「めまいの検査」は?
〇中枢性めまい
〇抹消性めまい
〇めまいの検査
〇1番多い抹消性めまい
「良性発作性頭位めまい症」
●当院での検査
〇眼球運動の検査(目の動きの検査)
〇重心動揺検査
こんなお悩みありませんか?
☑初めてめまいが起きて不安です
☑一度治っためまいがまた繰り返します
☑薬を飲んで安静にしていても治りません
☑耳からのめまいと言われたのですが、脳が心配です
☑CTを撮ったが「問題ない」と言われてしまったがめまいがある
☑ふらついて転びそうになってしまった
☑エプリー法という治療法を受けたいのですが
☑メニエール病と言われたが、改めて検査・診断してほしい
正しいめまいの検査・診断・治療を行うことで、お悩みを解決できる可能性があります!
当院では、めまいの検査・治療に力を入れておりますので、気軽にご相談ください。
なぜ人は立てるのか?~「平衡感覚」とは?~
人形を立たせることができますか?
支えを使うとか特別な細工をしないと人形単体で立たせることは難しいでしょう。しかし、人形と同じ形をしたヒトは自立できます。
ヒトの平衡感覚は、前庭感覚と呼ばれる耳からの感覚、眼からの視覚情報、体性感覚と呼ばれる足などの筋肉や腱からの感覚と、それらを統合する脳(中枢神経系)によって成り立っています。そしてこれらの情報を頸や手足の筋肉に伝えることで筋肉の力で立つことができるのです。
「めまい」とは?
脳内でこれらの感覚間のミスマッチや統合異常が生じると、我々はめまいという感覚が生じます。めまい症状は、自身は静止しているにもかかわらず、まわりの景色が動いて見える異常とも言えます。回転したり揺れ動いたりして見えます。「動いて見える」ということは、目が動いているということです。自分の意思で目を動かしているのではないので、異常な目の動きと言えます。この異常な目の動き(眼振)を客観的に把握することが患者さんに何が起きているのかを考えるのに重要です。
これに対して、テレビなどでよく見るぐるぐるバットのように、まっすぐに立った姿勢でグルグル回転すると回転方向に向かった眼振が生じ、しばらくすると回転が続いても眼振は治まります。グルグル回転を急に止めると逆方向への眼振が生じ、めまいを自覚します。このめまい感を病気と思う人はありません。
「めまいの状況(種類)」と「めまいの検査」は?
突然めまいがすると多くの人が脳の病気、特に脳卒中になったのではないかとパニックに陥ります。めまいについてある程度知っている医療関係者でも突然激しいめまいが起きたらやはり脳卒中を心配するでしょう。
めまいを「中枢性めまい」と「末梢性めまい」に分類することがあります。
中枢性めまいとは?
脳卒中によるめまいは「中枢性めまい」です。中枢性めまいにいち早く気づくことができれば、血栓溶解療法等のごく早期に限られた治療を受けられる可能性も高くなります。したがって、めまい患者さんが救急搬送される場合は搬送先は脳卒中に緊急対応できる施設が望ましいのであって、一般の耳鼻科ではありません。
しかし、めまい患者さんの大多数は、脳ではなく耳に原因のある「末梢性めまい」の患者さんです。
末梢性めまいとは?
脳卒中が原因でめまい症状が出た「中枢性めまい」の患者さんには、めまい以外にも脳卒中の症状が出ているのが普通と考えられます。
これに対して「末梢性めまい」の患者さんにはめまい以外の症状が無いのが普通です。
めまいの検査
めまいが起きている患者さんには異常な眼球運動が見られますが、めまい以外の症状が出ない末梢性めまいの患者さんでは唯一他覚的にとらえられる「眼振」が極めて重要な観察ポイントになります。それゆえ、めまい患者さんに対して眼振所見を見ないで診療を行えば、しばしば場当たり的な対応にならざるを得ません。「CTやMRI等の画像検査」は脳出血や脳梗塞を診断するのには有効なのですが、最も頻度の高い末梢性めまいの診断にはほとんど役に立ちません。
末梢性めまいは視覚などの他の感覚によって代償、補正が効きますので眼振もすぐに目立たなくなってしまいます。したがって、眼振の観察には視覚による代償を除外するために患者さんが何も見ていない状態、すなわち赤外線カメラ等を使って暗所で観察するのが最も勧められます。
1番多い末梢性めまい「良性発作性頭位めまい症」
頻度の高い末梢性めまいのなかでも頻度が高いのが「良性発作性頭位めまい」です。
左右の三半規管のどこかに耳石が入り込んで、これが神経に影響するたびにめまいを引き起こす病気です。治療は石を三半規管から排除するか溶かしてしまうことです。石を溶かす薬はありませんから,できれば石を追い出してしまう治療が効果的です。そのためにはまず左右で合計6つある半規管のどこにどんな風に石が存在しているのか確認する必要があります。これには先に述べた「眼振」を観察する以外に方法はありません。CTやMRIではわからない事を銘記すべきです。そして診断が確定できれば、場当たり的な薬物治療ではなく、エプリー法に代表される適切な頭位治療を行うことができます。
当院での検査
当院ではこの検査に赤外線CCDカメラを備えて暗所開眼下の検査ができるゴーグルを使用し、且つその時の眼球運動をコンピュータで解析できる装置を用いて中枢性めまい患者さんに現れるような異常眼球運動も観察できるようになっています。
眼球運動の検査(目の動きの検査)
自発眼振検査(Spontaneous Nystagmus)
暗所開眼という、視覚の影響を除いた状態で起こる、自然の状態での眼球の動きが観察できます。通常では観察できない眼振が高頻度で観察できます。
注視眼振検査(Gaze Nystagmus Test)
上下左右を注視できるかどうか、その時に異常な眼球運動が存在しないか調べます。眼球は通常は真ん中にしかあり得なくて、側方注視は小脳脳幹部の神経積分機構が正しく働いてはじめて可能となります。この機構を調べる検査です。
指標追跡検査(Smooth Pursuit Tracking)
スムースに動く物体を眼で追従できるかどうかを調べます。網膜に写った情景は後頭部に伝達され、それを目が追いかける指令が大脳から出されて小脳や脳幹に伝わり、眼球を動かす神経が働く機能の検査です。
衝動性眼球運動検査(Saccade Test)
視線を変える検査で、瞬間的に移動する物体を眼で素早く正確に追えるかどうか調べます。例えば、視標が停止した点に正確に視線が止まっていなければ、小脳における測定障害が起きている鋭敏な指標となります。
視運動性眼振検査(Optokinetic Nystagmus Test)
動く物体を目で追いかけること出来る速度を調べます。小脳脳幹の機能検査です。
頭位眼振検査(Positional Test)
頭の位置の変化(重力の耳に対する影響の変化)で起こる眼振を調べます。耳石によるめまいの方はこの時に出現する眼振が決め手になります。椅子に座った状態やベッドに横になった状態で頭の位置を変えて、出現する眼振の状況を解析します。
頭位変換眼振検査(Positioning Test)
上の頭位眼振検査と同様ですが、めまいで一番多いと言われる後半規管型の良性発作性頭位めまいの診断には唯一の決め手となる検査法です。ベッド上で頭を45°横に向けた状態で素早く寝起きした時に現れる眼振の状況を解析します。
温度眼振検査(Caloric Test)
耳に温水や冷水を注入すると三半規管(水平半規管)を刺激することができます。その際の三半規管の状態は眼振となって表れます。この眼振は視覚によって抑制されます。耳の刺激で眼振が発現したり、視覚で抑制される経路は耳だけでなく、当然のこと脳が関与しています。先の視運動性眼振検査とこの検査を組み合わせて脳のテント下病変の部位診断が試みられたデータがあります。以前に耳性めまいとして神経内科から紹介を受けた患者さんにこのデータをあてはめると、小脳障害のパターンに一致し、後日になって後下小脳動脈領域の小脳梗塞が判明したことがありました。
V-HIT(video Head Impulse Test)
ヒトは目の前の一点を見つめたままの状態で頭を急速に動かしても、耳の平衡能力の働きが正常であれば一点を見続けることができます。この能力に障害が起きていないか調べます。たとえば、右耳の平衡機能に障害がある場合、急に頭を右に振ると、頭と一緒に目も右に動き、コンマ数秒後に急速に左に視線を戻す動き(Catch Up Saccade)が起こります。この動きを1秒間に300コマ程撮影できる高速度カメラで撮影してコンピュータで解析します。この検査で異常がなく、眼振が垂直性であったり純回旋性の場合や、眼位が垂直にずれている急性めまいの患者さんはMRIに異常が見出せなくても脳からくるめまいを疑うべきと言われています。
これらの検査では眼を観察しますが「目の検査」ではありません。「耳と脳の検査」ですので、検査中は目を大きく見開いていていただき、キョロキョロすることなく、まばたきをできるだけ控えていただけると良い検査結果が得られます。
重心動揺検査
転ばぬ先の杖……..。 3分間 はかりの上に立つだけの検査です。
身体の揺らぎを定量的に調べます。
立った時の重心の片寄りや揺らぎの大きさや速度などをコンピューターで解析します。
目を閉じて視覚の助けをなくした時や足元を柔らかくした時のバランスも調べます。
耳が原因の平衡障害が永年にわたって残っている方が多く見受けられます。
視覚で代償されてめまいが治まっていて、もう治っていると勘違いされている患者さんです。足元を柔らかくして目を閉じていただくと途端に揺らぎが大きくなるのですぐに分かります。薬で治ったと思い込んでいる患者さんが多く、暗がりや視界が動いていたりして不安定な環境では転倒の危険性が大きくなります。
このような患者さんは眼振検査で耳の具合を確認し、治せる不具合は治します。すでに治らなくなっている方でも、前庭リハビリを受けて頂くことでリスクの低下が期待できます。
めまいの治療方法
治療はめまいの種類によって変わりますので、一番ベストな治療を提案いたします。
〇お薬による対症療法
〇前庭リハビリ
〇頭位治療
予約・受診方法
【めまい・ふらつきの予約方法】
診療時間内にお電話でご予約をお願いいたします!
★めまい・ふらつきの方は、当日及び、数週間先まで予約が可能です!
TEL 078-939-7801
当院ではめまい発作からある程度時間が経過していても、検査機器が揃っていますので正しい診断が可能です。
他院で、めまいは症状がある時でないと診断ができないと言われて来院された方も多く、検査を急がれますが当院ではそれは当てはまりません。
発作直後の吐き気の強いなかで無理をするよりも、後日にキチンと検査をして正しい診断をすることが、正しい治療と早期の回復につながります。
前庭神経炎(一側の内耳障害のめまいの代表的疾患)は機能が回復しなくても、
脳による代償作用で時間の経過とともにめまいは軽快しますが、
障害は長く続いていることも多いです。
「いただいた薬で治った」という勘違いは時に危険で、
暗い場所や景色が動いている所で転倒する危険が増す可能性が大きくなります。続きはこちら