急性中耳炎
赤ちゃんの中耳炎
鼻水が出ていて咳をしていた赤ちゃんが熱を出したらかなりの確率で中耳炎です。
耳の症状に気づかれるのは5人に1人(20%)と言われ、80%は耳の症状は無いという報告もあります。当院でも「耳を触る」「耳を気にする」という症状で活動性の中耳炎が見つかることはまれです。
中耳炎の初発年齢は大部分が0~1歳といわれています。(昔の専門書には5~6歳に多く、耳の痛みで発見されると書いてありました)
中耳炎の解説
耳と鼻をつなぐ耳管を通して、鼻にいる細菌やウィルスが中耳に入り、炎症が起こります。耳そのもの(耳垢など)が原因で起きるものではなく、鼻の奥に原因があります。
Q・中耳炎は一度なるとクセになると効きましたが本当ですか?
A・完治していないのに「治りました」と宣言され、それを信じてしまって治療不充分になってもそうなります。再発を繰り返す原因の一つです。
Q・中耳炎を繰り返していますが、粘膜が弱い体質だから風邪をひくと中耳炎になりやすいと言われ、風邪の時は小児科でなく耳鼻科に来るように言われていますが、小児科に行けないのは不安です。
A・完治していないから繰り返すと考えられます。中耳炎の治療は普通は時間がかかります。確かに短期間で「治りました」宣言されることを、長い時間をかけてキチンと治療されることより歓迎する人が多く、あまり時間をかけないのがトレンドのようです。小児科には、必要な時には必ず行かれることをお勧めします。
Q・「治りました」と言われても、まだ耳鼻科に行かないといけないのですか?
A・抗生物質で熱は下がっても、鼓膜の奥の空間の液体が残っていたり鼻の奥に菌が残っていることがしばしばあります。「治りました」と言われた時に、これらの問題が解決されているかどうか先生に念押ししましょう。
※診断の決めてとなるのは、耳鼻科専門医が判断する鼓膜所見です。非専門医の「お耳が赤い」は気にしないでおきましょう。異常な鼓膜所見は赤いこともありますがそうではないことも多く、総合的に判断されることです。実際に耳垢が充満していて鼓膜が見えなかった人も多くありました。この先は個別の説明になります。お尋ねになりたいことをメモされて受付に渡していただければ、お答えを用意したうえでお呼びします。
治療方法
当院では中耳炎診療ガイドラインを参考にした診療を行っております。抗生物質は必須ではありません。実際当院では初回受診の新鮮例の多くが抗生物質なしで治っています。
熱が続いて全身状態が悪い場合、鼓膜切開して排膿を充分に行えば速やかに熱は下がり快方に向かいます。こじれて、もう効く薬が無い状態になってから来院される方の多い当院では、鼓膜切開術は喜んで行うことではないですが、何も特別な治療ではありません。
滲出性中耳炎
滲出性中耳炎とは
滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)とは耳管の機能が低下した状態(?)で、中耳に液体がたまった疾患といわれています。急性中耳炎が治り損ねた状態だと説明する専門誌もあります。液体を調べてもバイ菌は検出されないのが普通ですので抗生物質の効果は疑問(理屈上では無効)です。
治療方法
①鼻の吸引処置(奥の耳管開口部付近までキレイにすることが重要)と、これを補助する投薬治療
②耳管処置
③鼓膜切開
④鼓室チューブ留置術
上記4つを中心に行います。
④の鼓膜チューブ挿入術は、中耳のねばい液体を完全に除去する目的で全身麻酔下で行うことを推奨しています。したがって、入院、全身麻酔が可能な病院に紹介します。安易に行うと、術後にチューブのトラブルが起きやすいです。。
いずれにしても治療が長期にわたる場合が多く、定期的な通院が必要です。
定期的な通院を回避することを目的とした鼓室チューブ留置術には賛成していません(チューブは鼓膜にダメージを与えますし、チューブが効いている間に原因となった鼻やのどの治療をしておく必要があるからです。)
慢性中耳炎
慢性中耳炎とは
側頭骨の乳様蜂巣と呼ばれる部分の炎症(これが中耳炎の本体)が慢性化したものです。中耳炎が完治しないで、鼓膜に穴が開いた状態(鼓膜穿孔)が永く続いた状態や穴はふさがってはいても鼓膜の再生が不完全になっている状態が多く見られます。
慢性中耳炎の大半のケースは、急性中耳炎が完治されないままで放置された結果起こるもので、子供の頃に発症したものでは乳様蜂巣の発達が未熟です。
痛みは感じないケースが多く、あってもそれほど強くありませんが、化膿がひどくなると痛みが強くなります。
通常、難聴があり中耳炎の進行とともに際限なく悪化します。
治療方法
すべて、症状に対する対症療法になります。少なくとも耳漏が停止するまでは治療を受けて下さい。
耳漏を抑えるための保存的治療を行います。保存的治療には①耳処置(耳漏の吸引除去)②投薬③耳管処置を行います。
保存的治療を行っても進行がコントロール出来ない場合、手術の適応を考えることになります。手術は究極的な対症療法です。
手術は通常全身麻酔が必要で、入院期間は最低でも2週間、通常は一ヶ月程度です。
慢性中耳炎が骨を溶かすタイプの、いわゆる真珠腫の場合はまた違う対応になります。