★眼振について
眼球は、何も信号が無い状態では真正面を向いた状態に固定されているものです。
耳の三半規管が刺激されたり抑制されたりすると、眼球はその三半規管によって決まった方向にゆっくり動かされます。そして、急速に元の位置に戻ります。これが耳が原因で起きる前庭性眼振です。
耳石が三半規管に迷入して起きるめまいは、通常は内耳のリンパ液よりも重い炭酸カルシウムの塊が頭の向きの変化によって三半規管内を移動し、その時に起きる内耳のリンパ液の流れによって三半規管を刺激したり抑制したりして起きます。従って、頭が静止した状況では眼振は起きず、めまいも起きません。頭を動かせば異常のある三半規管の状態に合わせた眼振が起き、頭の動きの方向が変われば眼振の方向も合わせて変わります。従って、頭が静止した状態で眼振が観察されれば三半規管に迷入した耳石だけが原因のめまいではありません。
前庭性眼振という異常な眼球運動は、物を見つめる力(専門家は「固視」と言います)によって強く抑制され、よほど強いめまい発作の急性期でない限り明るくて外界が見えるところでは観察されません。従って、めまいがある程度落ち着いた時点では、視界の影響を除いた「暗所開眼下」という条件下で眼球運動を観察しなければ正しい診断は出来ません。くわえて、じっと座っているだけでなく、体を寝かせたり、寝返りさせたり、起こしたりして観察しないと誤診に繋がることがあります。